給食は食事か、教育か

書評

先日、小学校時代を千葉で過ごした方と話していたときに、不意に気が付いた。
「そういえば、揚げパンを食べたことがない」と。

「給食といえば揚げパン!」「給食の人気メニュー」のようなイメージがある揚げパン。その名は聞いたことはあったが、そういえば小~中学校の給食を通して、一度も食べた記憶がない。
どうやら揚げパンは全国区の給食ではないようだが、関東圏でおなじみのため、「給食といえば揚げパン」のようなイメージが全国に流布されているのかもしれない。

さて、そんなわけで今回は「給食」をテーマにした本を紹介したい。

藤原辰史著『給食の歴史』(2018年、岩波新書)

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嫌いなものが食べられず、昼休み中、給食とにらめっこしていた。そんな記憶を持つ方も多いのではないだろうか。世代によって「給食」の想い出は様々だと思うが、「給食」の時間には独特の空気があり、ひとつの文化を形成しているように思える。そんな給食は、いつから始まり、どのような変遷を経て、いまに至っているのか。そして、どのような課題があり、どのような未来を描こうとしているのだろうか。

近年、「おいしい給食」が増えている一方、「給食費の未払い」が問題視されている。しかし、夏休みなどの長期休暇があけると、ガリガリに痩せてくる「欠食児童」の存在も、過去の話ではないということを忘れてはならない。かつて給食は、「貧困対策」や「体格向上」を主眼として始められた。そこに、「教育」としての給食という思想が入り、校内で調理する「自校方式」の給食と、センターが数校分の給食をまとめてつくって配送する「センター方式」のどちらを採用するかで、議論が紛糾することも多々あった。給食は「食育の現場」として、教育的価値を重視する姿勢は昔からあり、それを支えてきたのは、いつの時代も「子どもたちのため」という、現場の職員たちの熱い想いであった。「学校給食が飼育ではなく、児童生徒が家畜ではなく、未来を作る主体であるならば、そこに真っ先に豊潤な予算が割かれてもおかしくない。」本書で著者がそう語るように、給食は子供たちの未来を変える力を持っている。そう思わずにはいられない、魂のこもった一冊であった。

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ちなみに幼少の頃、「利き牛乳」ができるぐらいよく牛乳を飲んでいたのだが、学校給食の牛乳が、お気に入りの「みどり牛乳」から他社製品に変わったときのがっかり感をいまでも覚えている。いまは利き牛乳などできないが…。(前田)

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