料理で精進

書評

最近、和食がマイブームである。
食べるほうでなく、つくるほうで。
(もちろん、食べるのも好きだが)

料理は昔から好きで、日常的につくってはいるが、
ここ最近は晩御飯を米中心の一汁一菜を基本にしていることもあって、
和食の登板回数が増えている。

その和食ブームの火付け役となったのが、今回紹介する一冊だ。

野地秩嘉『京味物語』(2021年、光文社)

**---

東京は日本橋に、日本料理の最高峰と謳われるお店があった。希代の料理人・西健一郎氏が1967年に開業した、「京味」という京料理屋である。当時はまだ京料理も、カウンター割烹というスタイルも一般的ではなく、日本料理はお座敷で食べる、というのが主流だった。開店当初は毎日開店休業のような状態であったが、次第に押しも押されもせぬ名店へと成長していき、京味の成長と共に、カウンター割烹のイメージも、新橋のイメージも変わっていったという。実に多くの著名人たちが足しげく通い、仕事のスケジュールはさておき、京味の予約にあわせて年間の予定を調整するという方も多数おられたそう。それほどまでに、西健一郎氏の料理は人々を魅了した。

2019年に西健一郎氏の逝去に伴い、惜しまれながら閉店した京味だが、その遺伝子は数多の弟子たちに受け継がれている。そして本書こそが、京料理の心、料理人・西健一郎氏の流儀と生き様を今に伝える、唯一無二のバイブルとなった。京味に通った常連の一人である著者が書き綴った本書は、さながら孔子の言葉を弟子がまとめた、料理界の論語のよう。「季節の素材が料理を教えてくれる」「おいしいもんと珍しいもんは違う」「死ぬまで勉強」。西健一郎氏が常々口にしていた三つの教えだ。本書は料理を通して、日本人が大切にしてきた心とはなにかを問いかける哲学書なのかもしれない。

---**

野菜のおいしさ、旬の食材のおいしさを引き出す、シンプルで繊細な調理。
料理は趣味の時間でもあるが、和食をつくるときは修行のような楽しさもあって、料理欲求がますます過熱している。

一方で、ウクライナ情勢を憂慮しながら、ウクライナ料理のボルシチをつくってみたり、相変わらずいろんな料理に挑戦もしている。

世界三大スープのひとつ、ボルシチ。

結局、和食じゃない料理の写真を載せてしまった。
だって、美味しかったのだもの。

タイトルとURLをコピーしました