令和をつむぐ

書評

こんにちは。前田です。
元号が「令和」に改元されて早2カ月ほど。
だいぶ新元号にも慣れた気はしますが、同時に、平成の記憶が加速度的に薄れていっているような気もする今日この頃です。

さて、そんなわけで改元ほやほやの先月、こちらの本の書評を書かせていただきました。

原武史 著『天皇は宗教とどう向き合ってきたか』(2019年、潮新書)

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30余年の平成時代が終わり、「ビューティフルハーモニー」とも訳される令和の時代が幕をあけた。元号とは、それ自体で意味をもつものではなく、時代を取り巻く環境と変化、そこで生きる人々の想いが織りなす、ひとつの反物のような共同制作物ではないだろうか。

平成の世に育った方々には、天皇明仁・皇后美智子両陛下による「平成流」の姿こそが「天皇像」として認識されているだろう。しかし、天皇が変われば「スタイル」も大きく変わる。明治維新からの150年の変遷がそれを如実に物語っており、実は、天皇の「宗教観」も大小の波にさらされ、大きく変わりながら現在に至っている。

天皇皇后両陛下が被災地を訪れ、跪いて被災者の方々を励ます姿。万世一系の天皇家を敬う心。アマテラスを頂点に仰ぐ国家的神道理念。我々がいま、あたりまえのように認識している、天皇像、皇国史観は、いったいいつから、どのように形成されていったのだろうか。

本書ではそういった天皇と宗教の関係、そして時代と共に変化していく天皇像と、時代の荒波に翻弄されながらも、それぞれがあるべき天皇像を模索し、日本と国民を慮ってきた天皇の姿を垣間見ることができる。

「天皇とはこうあるべき」「日本国民ならこうあるべき」。そういった凝り固まった考えをいったん脇におき、我々が生きる「令和」という時代をどう築いていくか。どのような世の中にしたいと願うか。本書を通じて、我々と新天皇皇后両陛下が織りなす生き方が試されているように思える。

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