戦後75年目のバトン

書評

今年で終戦から75年を迎える。
今回紹介するのは、いまから5年前、戦後70年の特集として放送されたNHKスペシャル「アニメドキュメント あの日、僕らは戦場で~少年兵の告白~」制作の取材記をまとめた一冊である。

NHKスペシャル取材班『僕は少年ゲリラ兵だった 陸軍中野学校が作った沖縄秘密部隊』(2016年、新潮社)

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イスラム国(IS)が少年兵の動画を公開し、世界中から批判が相次いだことをご記憶の方も多いだろう。一方で、日本にも「少年ゲリラ兵」が実在したことをどれだけの人が知っているだろうか。

本土決戦が迫りくる、太平洋戦争末期。沖縄では「護郷隊(ごきょうたい)」と呼ばれるゲリラ部隊が組織されていた。それを主導したのは、陸軍中野学校という、いわゆるスパイ養成機関である。陸軍中野学校には、スパイ養成機関という役割の一方で、ゲリラ戦のプロ養成機関という一面もあったのだ。防衛・持久戦に切りかえた日本は、沖縄を含む日本各地にゲリラ部隊を作るべく、陸軍中野学校の士官を派遣。そうして組織されたのが護郷隊だった。
この護郷隊には、18歳に満たない少年までもが「ゲリラ兵」として召集され、戦力として戦わされていたのだ。中高校生ぐらいの子供たちが、有無を言わさず戦争に駆り出されていたのである。実際に少年ゲリラ兵として戦争を経験した方々は、戦時中、人を殺すことも、隣で友人が命を落とすことも、弾丸が飛び交う戦場も、「なんとも思わなく」なってしまったという。

護郷隊の取材であることを告げると、何も言わずに電話を切る方、固く口を閉ざす方も多かったという。取材に応じてくださった方々でも、「いまでも悪夢にうなされる」方は多いようだった。なぜ少年たちは戦争に駆り出されたのか。そして戦地となった沖縄でなにが起きたのか。彼らの貴重な証言と、取材班の丹念な取材から、戦争の真実がつきつけられる一冊。

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貴重な証言はバトンとなり、我々に渡された。
よく戦後というが、戦争は過去ではなく、地続きでつながった「今」である。

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