日本のなかのリトルインド

書評

チャッチャ。

パラパラ。

シャー。

トン。

そんなリズミカルでゆるーい字幕が続く動画を見たことがある方も、少なくないのではないだろうか。
インドの屋台料理をレポートする動画などを配信するYouTubeチャンネル、
「今日ヤバイ奴に会った」である。

衛生とかカロリーとか気にしていたら、絶対に食べられないようなインド屋台料理の数々だが、動画を見ていると、「そんなこと気にしないから食べたい!」という気持ちになってくるから不思議である。

火柱をあげながらつくるカレーや、親の仇のようにチーズをふりかけてつくるサンドイッチ、平らな鉄板の上で見事につくりあげる卵300個をつくったスクランブルエッグなど、とにかく見ているだけでも楽しい、新感覚なエンターテインメントがYouTube上には広がっていた。

そんな人気動画チャンネルが、まさかの書籍化を果たしたというものだから、さっそく紹介したい。

坪和寛久『今日ヤバイ屋台に行ってきた インドでメシ食って人生大逆転した男の物語』(2021年、KADOKAWA)

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大学生のとき、人生ではじめてインド料理屋でカレーを食べた。大学の近所に佇む、あきらかに異質な空間。店主らしき人物が、店の表につきでたタンドール(インド式焼き窯)で調理をしている姿を横切り、薄暗い店内に入る。気さくで人懐っこい店主に話しかけられながら食べたナンとカレーの美味しさに度肝を抜かれ、以来、インドカレーは大好物のひとつとなった。

と、カレーの余談が長くなってしまったが、今回紹介する本は、食欲を刺激されながら、インドのおおらかさ、人と人とのゆるい支えあいの精神を感じられる一冊だ。著者はADHDの診断を受け、働くことに息苦しさを感じていたなか、インドでの仕事の誘いを受け、渡印して働くことを決意。インドで働きながら、ムンバイやデリーなどの屋台の様子を撮影してYouTubeへアップしたところ、その動画が反響を呼び、出版に至ったという。私もこの動画のファンであったから迷いなく本書を購入したが、このような出版の経緯や背景はまさに時代を表しているように思える。あきれるぐらいにカロリー過多な屋台料理の数々や、ユニークなインドの人々のやり取りに笑いながら、気がつくと人生観や働き方を見直してみたくもなるような空気が流れ込んでくる。

そういえば、会社の近所には徒歩5分以内に4件のインド料理屋がある。福岡は他都市に比べてインド料理屋がずいぶんと多いように思えるが、おそらく人口対比・密集度共に全国NO1なのではないだろうか。インドの魅力に取りつかれた方は、日本のなかのリトルインド、福岡もぜひご堪能いただきたい。

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弊社近辺のインド料理屋の密集度は尋常じゃないように思うが、それにしても福岡はインドカレー屋が多い。
郊外に行っても、通り沿いにインドカレー屋がしばしば登場したりするもんだから、福岡の人はどれだけインドカレー好きなんだとも思うし、そんなにインドの方がたくさん福岡に住んでいるものなのかと驚く。さすがはアジアの国際都市というべきか。

本の紹介というより、インドカレー事情の紹介となってしまったが、それはご愛嬌ということで。

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