一番スゲェのは、

書評

プロレスなんだよ!

今やアメリカの人気プロレス団体WWE(World Wrestling Entertainment)のトップレスラーのひとりとなった、元・新日本プロレスの中邑真輔選手の言葉だ。

2004年当時、PRIDEやK-1などの総合格闘技、キックボクシングの興行が人気を集め、プロレスは猛烈な逆風を受けていた。
「プロレスは弱い」、「プロレスはやらせ」。
そんな世間からの心無い声と冷たい視線をよそに、若手レスラーの代表格だった中邑真輔選手(当時24歳)は、真っ向から総合格闘技ブームにぶつかっていった。
そして見事、プロレスラーが強いこと、なによりプロレスラーが「スゲェ」ことを証明して見せたのだ。

いまでもプロレスファンの胸を熱くするこの名言は、プロレスラーたちの矜持が凝縮されているように思える。

さて、そんなわけで今回紹介するのは、プロレスにまつわるこんな本。

瑞佐富郎『新編 泣けるプロレス (いま伝えたい、名レスラーたちの胸が熱くなる28の話)』(2017年、standards)

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いま、プロレスブームの再来と言われている。総合格闘技などの格闘技イベントの台頭による興行不振で、どん底の低迷期を経たプロレスだったが、見事にその人気を復活させた。

なぜプロレスは人を惹き付けるのか。

「総合格闘技は強者を讃えるスポーツ。プロレスは弱者を勇気づけるジャンルだから」

総合格闘技全盛の時代に、そういってプロレスの道を選んだ男がいた。

「プロレスファンというのは、プロレスとともに成長していく。だから、思い入れも、他のスポーツとは違って来るんです。<中略>……その勝ったこと自体が大事なんじゃない、そこまでの過程をファンが見てくれているから、意味があるんですよ!プロレスは、過程なんです!」

そう熱く語った男もいた。

プロレスは、リングの上でも、外でも、胸を熱くさせてくれる。レスラーたちは何を想い、リングにあがっていたのか。本書は、昭和~平成の名レスラーたちの胸を熱くさせる28の物語が納められている。

プロレスを観戦したことがない方には、その魅力はなかなかわかりづらいかもしれない。しかし、本書は人生の縮図のように思える。リングにあがる姿には、レスラー一人ひとりの生き様、そして美学が凝縮されている。

どう生きるべきか。大切なものは何なのか。レスラーたちはリングの外でも、我らを勇気づけてくれる。そんな気持ちになる1冊だ。

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新型コロナウイルスの影響でプロレスの興行も中止がつづいているが、興行が再開されたときには、きっと見たこともないような、スゲェものを見せてくれると信じている。

そのときをトランキーロ、焦らずに待ちたい。

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