愛飲家へ贈るプレゼント

書評

気が付いたら、クリスマスが今年もやってきている今日この頃。
今年はニューヨークのクリスマスツリー点灯式も現物客0で行われ、今後の見物も人数制限を行うという。いつものクリスマス、というものがどんなものかよくわからない気もするが、今年は例年通りではない、特別なクリスマスとなりそうだ。

ところで、クリスマスと聞いて思い浮かぶものはなんだろうか。
個人的には、毎年クリスマスになると見返したくなる映画『Love Actually』か。
いや、クリスマス映画というと、『ホーム・アローン』の記憶がちらほら頭をよぎってくる気もする。

とはいえ、クリスマスというと切っても切れない(?)のはやはり、「プレゼント」ではないだろうか。今回は先週「新人のつぶやき🎁」で本をプレゼントする、という話が出てたので便乗しようと思う。

自分も以前、プレゼントに本をいただいて、たいそう嬉しかった記憶があるので、今回はそのときいただいた本について書いていた書評を紹介したい。

村上春樹『もし僕らのことばがウイスキーであったなら』(2002年、新潮文庫)

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スコッチ・ウイスキーの聖地アイラ島、そしてウイスキー発祥の地ともいわれるアイルランド。ウイスキー好きであれば、一度は訪れたい(?)あこがれの場所ではないだろうか。
個人的な話だが、私はウイスキーが好きだ。なかでも、スコッチ・ウイスキーとアイリッシュ・ウイスキーが特に好きである。
本書は、そんなスコッチ、アイリッシュ好きの私が、誕生日プレゼントとして、1本のスコッチ・ウイスキーとともに頂いた一冊だ。なんと粋なプレゼントだろうと歓喜したのは言うまでもない。
現地のアイリッシュパブでは、どんなふうにウイスキーを飲んでいるのだろうか。蒸留所ではどんな人たちが、どんなふうに、あの愛すべきウイスキーたちを醸しているのだろうか。そんな興味を「著者の旅行を追体験する」ことで十二分に満たしてくれた。著者が「ウイスキーの匂いのする小さな旅の本」と語るように、ページを開けば、ピート(泥炭)の薫りが漂ってくるような、島の空気が感じられる旅行記であった。
アイリッシュはこうで、スコッチはこういう製法で…と知識を詰め込むだけでは面白くない。やはり、ウイスキーにまつわる物語とともに、現地の風情とともに喉に流し込む。遠くアイラ島の薫りに、アイルランドのパブの風景に、思いを馳せながら飲むことで、よりいっそうおいしく、また心地よい時を過ごせる気がした。
読めば読むほど、お酒が飲みたくなる。そして旅をしたくなる一冊であった。

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「本好きの人に本を贈るのは難しい」

とも言われるし、

「本を読まない人に本を贈るのも躊躇する」

という声も聞く。

そんなことはない。
「お土産を買ってきてくれたことはもちろん嬉しいけど、どんなお土産を買おうか考えてくれた時間が愛おしい」のと同じだ。
本というプレゼントを選ぶには、相手の内面をしっかり見つめる必要がある。
本をもらった人はきっと、その時間を、その想いを、愛おしいと思うだろう。

本好きの人は、自分では選びそうにない本をもらって喜んだりする。
ふだん本を読まない人も、特別な日にもらうと読んでみたくもなる。

そして、本には人生を変えるほどの力が秘められていたりするのだ。
あなたの贈った1冊が、あなたの大切な人の人生を変えるかもしれない。

というわけで、今年のクリスマスプレゼントにはぜひ本を。

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