奥深き絵本の世界

書評

本日、西南女学院大学にて「絵本づくりの現場から」と題した講義を担当させていただいた。
【認定絵本士養成講座】という絵本の専門士を育てる講座の一環で、九州では西南女学院大がはじめての実施校。

保育科に通う保育士の卵の方々への講義ということで、プレッシャーもあったが、受講生からも先生方からも大変好評いただけたようで、ホッと胸をなでおろした次第だ。

そんなわけで、今回は絵本にまつわる本を紹介させていただこうと思う。

山口雅子『絵本の記憶、子どもの気持ち』(2014年、福音館書店)

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幼いころに好きだった絵本、あるいは想い出に残っている絵本は何かと聞かれたとき、何を思い浮かべるだろうか。私の場合、『きんぎょがにげた』と、『おしいれのぼうけん』が脳裏に浮かんだ。

さて、本書は長らく児童図書館などで、〝絵本のお姉さん〟として子どもたちの絵本探しの手伝いや、読み聞かせなどをしてきた著者によるものだ。冒頭の質問は、著者が講師を務める大学で学生たちに与えた課題である。

この課題から見えてくるのは、「子どもは絵本に何を見ているか?」ということだ。著者は大学生たちに、子どもが楽しんで読むと思う絵本を持ってくるように言い、みんな真剣に絵本を選んで持ってきたそうだ。ところが、選んできた絵本はどれも「おとな好みのムードのある絵本」や「教訓やしつけの絵本」だった。

逆に、児童図書館などで子どもたちに大人気だった絵本を著者が紹介すると、「絵がかわいくない」「おもしろくない」と学生たちの間では大変不評だったそうだ。しかし、学生たちに不評だったそれらの絵本たちは、子どもたちには大好評で、大いに楽しんでいたという。ここに、「子どもたちが見る世界」と、「おとなたちが見る世界」の乖離が見受けられる。

子どもたちは絵本に何を見ているのだろうか。そして、どんなことが記憶に残っていくのだろうか。絵本選びの参考に、と思える一方、「子どもは世界をこのように見ているのか」と発見、いや、思い出させてくれる一冊ではないだろうか。

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原稿データを見ると、この記事を書いたのは6年ぐらい前のことだったので、昔の文章を見返すのもなんとも気恥ずかしいところがあったが…ともあれ、今回の講義では、本書で書かれていた内容を大変参考にさせていただいた。

最後に、とても素敵だった西南女学院大の校舎の写真をいくつかご紹介。

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