フォルモサとリップンチェンシン

書評

台湾が好きだ。
福岡から飛行機でわずか2~3時間。
紺碧の海に浮かぶ、緑豊かな美しい島が姿を現す。

桃園空港から中心地の台北までは、高速鉄道が直結。
車窓から亜熱帯の植生と、日本とはどことなく趣のことなる市街地を眺めていると、一時間もかからずに台北に到着する。

近代的できれいな駅を出ると、日本と変わらないような気もする既視感を覚えつつ、台湾の空気を吸い込み「ああ、異国にきたんだなぁ」と感慨にふける。
じっとりとした亜熱帯の気候も、刺すような陽射しも、異国情緒と台湾料理(と、もちろんお酒も)を味わう最高のスパイスだ。

そんなわけで、私はしばしば旅行で台湾を訪れては、台湾料理に舌鼓を打ち、台湾情緒を満喫している。
地元福岡で年に一度開催される、アジアフォーカス(福岡国際映画祭)で台湾映画が上映されるときも、優先的にチェック。
自宅で台湾料理がつくれるよう、台湾の調味料や食材も買いそろえている。

そんな台湾好きな自分であるが、台湾のことをいったいどれほど知っているのだろうか。
台北市の国立台湾博物館にある、2体の日本人の銅像を見てから募っていた思いを胸に、一冊の本を紐解いてみた。

福屋利信『台湾の表層と深層 長州人の熱情と台湾人のホンネ』(2017年、かざひの文庫〔発売:太陽出版〕)

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東日本大震災の折、総額253億円という世界最高額の義援金を送り、世界一の親日国と言われる台湾。2020年9月に逝去された李登輝元台湾総統が「台湾人の誇りは日本精神(リップンチェンシン)とともにある」と度々語っていたことを知る人も多いだろう。
この親日感情の背景を、「日本の統治がすばらしかったから、台湾はいまでも世界一の親日国なのだ」とひとくちに片付けてしまうのは、あまりにも軽率である。たしかに約50年の日本統治時代に、インフラの整備、公教育の充実、興業の発展が進められたことは、まぎれもない事実であり、日本が台湾の近代化に大きく貢献したことは言うまでもない。
しかし、はたして台湾人たちは諸手をあげて日本の統治を歓迎したのだろうか。台湾は古くから、中国本土からの移民、オランダの統治、明・清の統治と、外国からの力に翻弄されてきた歴史がある。そんな台湾が辿ってきた歴史や台湾国内での対立、戦後の台湾の苦悩を考えると、安易に「日本のおかげ」とは言い難いところがある。
本書ではそんな台湾の歴史を数々の台湾映画とともに紹介し、台湾の今を台湾の音楽シーンを引き合いにだしながら分析する。「世界一の親日国・台湾」があるのは、先人たちの努力と熱情、そして台湾人たちが複雑な想いを乗り越えた上でなお、親日国であることを選んでくれたおかげであるとも言えるだろう。台湾への理解を深めることは、世界一の親日国への礼儀ではないか。

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国立台湾博物館に建てられた銅像は、第4代台湾総督・児玉源太郎と第3代民政長官・後藤新平の像。
いずれも、台湾の近代化に貢献した長州人である。
なぜ彼らの銅像がそこに建てられているのか。気になった方はぜひ本書を読んでいただきたい。

*ちなみにフォルモサは、台湾の別称で「美しい(島)」という意味

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