遊撃する中小企業 お試し読み
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まえがき元のメディアなら話ができる。メディアという善意の第三者に客観的な記事を書いてもらうことは大変重要なことで、それが地元ならやりやすいのだ。記事になれば、記事になったという事実をSNSやブログで拡散することができる。こうして、同社は、創業から1年余りで、地元ではもちろん、ネット上でも確かなプレゼンスを示すことができている。 地元密着の例としては、田中工機株式会社も大変興味深い。北海道に次いで日本で2番目のジャガイモの生産地、長崎県にある同社が取り組んで来たテーマは、ジャガイモの収穫作業の機械化による効率化だった。 同社の最初の新案特許は昭和30年頃に遡る。創業者の田中嘉津雄氏が開発したのは、牛馬の飼料用の芋を割る器具を改良した「芋割器」だった。これは九州一円で飛ぶように売れたそうだ。 アイデアマンだった嘉津雄氏は次々にジャガイモ農家の作業を効率化する新製品を生み出していった。昭和56年に開発した振動式ジャガイモ掘取機「メークイン号」、昭和58年に完成した種芋の一連の植付作業を機械化する「クインプランタ」、昭和62年に発売を開始した掘った芋を自動的に集める「スーパーメークイン号」、その翌年に発売した、掘り取り前にジャガイモの茎や根を引き抜く、業界初のジャガイモ茎葉処理機「YIK-1」など今も生産・販売されている。農家の細かな要望に耳を傾けながら、地域に合った製品を開発してきたため、今では長崎県の全てのジャガイモ農家で製品が使われている。 さらに、新製品も次々と生まれている。掘り上げたジャガイモなどを残さず拾い上げ、8

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