遊撃する中小企業 お試し読み
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まえがき 本書で取り上げられた15社が九州で生まれ、九州を舞台として実績を積み、成果を挙げていることは示唆に富んでいる。どの会社もまず九州の中の顧客、身近な顧客を満足させるところからスタートしている。 欧州には、「うまい酒には旅をさせるな」という言葉がある。背景には次のような事情がある。⑴ 酒は、その土地の自然と風土によって育まれ、造り手の舌によって味が決められるのだから、特に食中酒であれば、酒が生まれた土地の食べ物と酒を一緒に味わうべきである。⑵ そもそも、酒は生鮮食料品である。長旅をさせれば品質が劣化する。⑶ 旅をさせれば、流通コストがかかる。そして、そのコストは生産者の負担となる。一物一価の原則に従えば、旅のコストをお客様に支払わせるわけにはいかないからだ。これでは、商品に旅をさせればさせるほど、生産者は疲弊して行く。⑷ いわゆるフードマイレージへの関心の高まりと消費者の意識の変化がある。スローフードが宣伝されるようになってから、長距離を移動する流通はコスト上昇の要因と世界の中の九州・GDPランキング(2017年)(出所)総務省「世界の統計2017」5

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