遊撃する中小企業 お試し読み
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まえがき命があります」。 遠くの市場は美しく見えるが細部は見えない。近くの市場は細部まで見える。遠くの市場を攻めるのにはコストがかかる。近くの市場には毎日通える。その近くの市場はこの豊かな島、九州の中にあるのだ。近くの市場を我が物にするのが良策ではないか。 紙面が限られており、紹介されている全ての企業に言及することはできないが、最後に二つのことを記して、この稿を閉じたい。 一つは、どの企業も地域の信用金庫ととても良い関係を築いていることである。東京の中央線の車窓から見える荻窪辺りのネオン看板に「遠くの親戚より質屋のオークラ」というのがあって、うまいことを言うもんだと感心したことを思い出す。これに倣えば「遠くの銀行より近くの信金」ということになろうか。地域の中小企業と地域の金融機関は、地域経済の底上げという共通課題を持っている。企業が栄えれば、その成果は一企業に留まらない。雇用が増える、消費が増える、社員が豊かになる。結果として、地域が豊かになる。さらに遠方から、その企業や商品を訪ねて観光客が来るようになれば、観光消費も増えることになる。その結果、税収が増え、それが地域の発展のために使われることになる。地域の中小企業と金融機関は地域を豊かにするという目的を共有しているのだ。残念ながら地元の底上げよりも福岡市などの都市部への進出に熱心な金融機関も見受けられるが、そういう理解を共有できる中小企業や地域のパートナーとして、信用金庫には期待が大きい。14

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