中村タイル商会創立100周年記念誌_150313
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33the history of One hundred years NAKAMURA株式会社中村タイル商会100年のあゆみ当時のエピソードからもそれは伺える。正次郎の会社には、九州各地から若い弟子、言ってみれば丁稚奉公者が三〇人はいたと伝えられている。今では考えられないが、当時はどこの家庭も貧しく、口減らしのために子供を丁稚奉公に出す家が多かった。中村の家は黒田藩の御用商人時代から人助けには率先して取り組み、門前の捨て子も温かく育てたという家風があり、その流れをくむ正次郎も庶民が口減らしで出した子供を弟子として抱え込み、仕込んでいった。自身深く帰依していた金光教の”おかげ精神”実践の場でもあったようだ。しかし、この行動は単なる人情話ではなく、正次郎の会社が事業としてうまく回転していたことの証左でもある。仕込んだ弟子たちもやがて大きな戦力になり、今度は正次郎を助けている。なかには職人として弟子と家族ぐるみの付き合いをし、その流れで七〇~八〇年たった最近まで交流していた職人もいる。発展途上にあった会社がまさに順回転をしていく典型であり、温情が利益となってかえってくることを証明している。正次郎には実子がなかった。それだけに親身になって弟子たちを世話していったのだろう。同時に、実子がない寂しさとこれからの事業も考えて、妻の弟を養子として迎えている。この養子が二代目社長を継承した中村英男である。

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