木槿の国の学校 試し読み
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86木槿の国の学校お寺での下宿生活下宿先として選んだのは、学校の傍の山腹にある禅宗(曹洞宗)のお寺、榮えい江こう寺じです。お寺には、町のサイレンがありました。また、桜の巨木があって、春の満開の時期、それはとても美しいものでした。この寺の住職(和おしょう尚)の中村さんは、佐賀のご出身でした。廃はいおく屋をお寺に改修し、使っていました。寺の運営は、柳川(福岡県)出身の有志の方々によって行われ、お参りをするのは皆日本人でした。部屋は、お寺の裏側に隣接する八畳ほどの広さの「離れ」を借りての生活でした。ご飯やみそ汁などの煮にた炊きは、屋外で七しちりん輪を使って行っていました。毎朝五時に勤ごんぎょう行が始まるため、その音に目覚め、一度も寝ねぼう坊することはありませんでした。学校までは、山を下って約十分の近さでした。ある時、寺の住職に、

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