木槿の国の学校 試し読み
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75第三章 榮山浦南小学校小学生といえども男子に対し、女教師は女性として見られないよう服装、表情などについて十分留意しておくことが求められました。ところで、複式授業というのは、一方が図画を学んでいる時、他方は算数を学ぶといった学習形態です。一人の教師が教えるわけですから、並大抵ではありません。特に時間割の組み方には難儀しました。子どもたち同士の喧嘩は結構多かったように思います。授業中といえども、片方の学年で指導をしている時、もう一方の学年で、トラブルが発生することもよくありました。中でも金さんは、少し乱暴なところがあって、友達をよく叩いたり、蹴けったりしていました。しかし、この子の家庭背景は少しばかり複雑でした。母親が継ままはは母だったのです。家庭で満たされぬ思いを学校で発散していたのかもしれません。私にはとてもよく懐なついていました。あの子は今頃どうしているだろうか。幸せに暮らしているだろうか。時々、ふとそんなことを考えることがあります。

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