こどもたちへ 積善と陰徳のすすめ
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3  はじめに『陰いん録ろく』は、中国の明みんの時代の大学者袁えんりょうぼん了凡が自分の息子天てんけい啓のために書き残した家か訓くんともいうべき善ぜんしょ書です。善よい行おこない(これを「善ぜんこう行」と呼びます)をすることが、中国人が最も望んだ高い地位の役人になる「科かきょ挙」の試験に合格し進しんし士となる道につながることや、毎日、善い行いを重ねることによって親から子へ、さらに孫にまで運うんが開けるという、原因から結果までを事実を示しながら解き明かしています。この本は本来、世の人々を対象に書いたものではなく、自分の体験や生き方を、息子の天啓に示すため、噛かんでふくめるように分かりやすいことがらを次々に解き明かして、善行をかさねることを勧める内容になっています。袁了凡が、長年にわたって実行した善行で会えとく得した「天を敬うやまう」という考えは、天を敬いながら善いことを行いつつ自分の人生を充実して生きるということなのです。とくに、謙けんきょ虚(ひかえめでつつましく)に善い行いをかさねる(これを積せきぜん善と呼びます)ことなのです。積善を実行しながら、自分の運命をよりよい方向に変えていくという考えは、今の私たちにとっても必要なことなのです。

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