こどもたちへ 積善と陰徳のすすめ
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23第一章 立命之学な虫や小魚の類たぐいを煮にころ殺し、焼き殺して食べてしまいます。ましてや害虫といわれる蚤のみや蚊かなどを殺すことは、何も考えずに常つね日ひ頃ごろからやっていることです。そのほかにも両親や兄や姉など目上の人にさからったり、仲のよい友だちや、妻や子ども、また親せきの間にあって、事のあるごとに悪いことをかさねるのですが、だからといって逆に善行をなす者は少ないのです。しかし、『易経』に書いてある意味をよくよく考えてみるならば、これらは小さな悪であっても一つ一つは消え失うせることはないのです。しかし、後々には積り積って大きな罪となり、ついには自分の身を滅亡させることになるのです。さて、また善いことも、およそ、人は小さな善行を少しずつ行うことは、何のご利り やく益にもならないと思いがちです。しかし、小さくとも善いことは、絶えず行っていけば、後々にそれが積り積って大きな善となり、大いなる福ふくとく徳(善行によって得られる功く徳どく)を得ることになるのです。また『易経』には「積せき善ぜんの家には必ず余よけい慶あり、積せき不ふ善ぜんの家には必ず余よおう殃あり」といっています。これらは小さな子供たちでもよく知っている戒いましめの言葉です。よく心を傾けて考えて見れば、決しておろそかにできない恐ろしいことなのです。雲谷禅師は私に、「孔老人があなたの一生涯を占ったすべてのことについて、よろしければ聞かせ

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