こどもたちへ 積善と陰徳のすすめ
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16第一 孔老人との出会い私は、おさないころ、早々に父を亡くしました。中国では高い地位の官かんり吏となることができる試験があります。それを科かきょ挙といいました(江戸時代の日本は士しのうこうしょう農工商の身分がありましたが、中国では、 志こころざしがあり才能のある者は、国の官吏として出世するためにきそってこの試験を受けました)。それをめざして勉強することを及きゅうだい第の業ぎょうと呼んでいました。たいへん難むずかしい試験ですので、合格するのは容易ではありません。しかし、合格すれば役人となって高い地位にまで出世することができます。そこで私は、その試験をめざして勉強していました。しかし、ある時に、母上より「そなたは、父が死んでしまい、親子で暮らしていく十分なたくわえもないのです。及第の業をやっても必ず合格するわけではありません。父上はお医者でしたので、これからは、医者になるための勉強をしてください。医者は人を救い、また生活もなりたつものです。生前のお父さまもそのようなお気持ちでした」と諭さとされました。母上の命めいじることなので、これをこ

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