『「いいんだよ」は魔法の言葉』試し読み 最新版
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17第1章 立花高校の現在さらに、自身が体験したエピソードがこの境界線に対する違和感を一層深めます。「14年前に実家に帰った時に象徴的な出来事がありました。母が用意してくれたお刺身醤油が偉く美味しかったんですよ。芳醇でこくがあってとろみもついて。で、しばらくその醤油瓶を手に取って見ていて絶叫です。『お母さん! これ、1年以上賞味期限過ぎちょる!』って」我が家ではあの日から、賞味期限を見て仕分けするようになったんです。で、もうダメになったやつを捨てようとするのですが、『待て、このソースはギリギリセーフだ。1カ月しか過ぎちょらん』って。…意味が分かりません。1カ月過ぎちょるからアウトのはずです。でも、それがセーフになる。しかし、3カ月過ぎたらさすがにアウトとか、結局は自分たちで決めたルールで賞味期限が動くんです。物事の本質を見事についたエピソードだと思いませんか?」使う人次第で、恣意的に移動する賞味期限の幅。セーフかアウトか、マルかバツかを決めているのは実は「私たちの解釈」であるということが、このエピソードから実に明快に伝わってきます。

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