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星の王子さま141国民の間にもペタンひきいるヴィシー(地名)政権を容認するか、ド・ゴールの亡命政府を支持するかに二分されている。サン=テグジュぺリはそのどちらにも属さずに、むしろフランス人全体の和解こそ大切であると説く、いわば中立的な立場をとっていた。日々、命がけの抵抗運動をしている人々からすると、それはほとんど空想の域をこえない、もしかすると腹立たしい態度であったかもしれない。やがてアメリカを中心とする連合軍が反撃に転じて、43年、その連合軍が北アフリカに上陸を開始した、それを見たサン=テグジュペリは軍隊へ復帰する道を選ぶ。その直前に本作はアメリカで出版されたようだ。だから少なくとも43(昭和18)年には書きあげられていたことになる。しかし戦時中のことではあり、大きく評判をとるのは、前述のように46年にパリで出版されて以降のことである。44(昭和19)年7月、彼は地中海のコルシカ島の基地から、ドイツ軍がいるフランス本土へ向けて出撃する。そしてそのまま、消息を絶ったのだった。彼の遺体はもちろん、乗っていた飛行機の残骸も見つかっていない。遺品の一部ではないかというのが、時おり地中海の海底から見出されることはあるのだが、未だ決定的な証拠とはされていない。ただ、ドイツ機によって撃墜されたとの推定が、比較的に広く信じられているよ

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