あなたも『世界の大文学』の通になる 電子ブック
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星の王子さま139〈ふしぎな少年=小さな星の王子〉物語の主人公「ぼく」は6歳の時にある本を見て感動し、初めて絵を描いてみる。ウワバミが象をのみこんだ図である。自慢して「これ、こわくない?」と人に見せるけれども、おとなの誰もその絵を分かってくれない。「帽子が何でこわいんだ?」というばかりである。確かにそれは、おとなの目には帽子を横から見て描いた形である、としか見えないかもしれない。ぼくはおとなの理解力の乏しさに失望し、絵かきになることをあきらめたのである。そして結局、飛行機乗りになり、世界の各地へ出かけることになった。その先々でしばしば自分が初めて描いたウワバミの絵を見せてみるけれども、誰ひとりとして正確に言い当てる人には出会えなかった。6年前のこと。独り乗った飛行機がサハラ砂漠の中に不時着してしまう。大切な飲み水は1週間分あるかどうか。ぼくは何としても、自分で飛行機を修理しなければならない。砂漠の中の独りぼっちというのは、おそらく海の中を漂っている人よりも孤独であるだろう。ある日、夜が明けると、変な小さな声がする。「ね、ヒツジの絵を書いて――」

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