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星の王子さま135〈フェミナ賞、そしてアカデミー小説大賞〉こうした経験をもとにして書かれた『夜間飛行』(31年)は、発行間もなく名作の評が高まって「フェミナ賞」を受賞している。サン=テグジュペリの文名はにわかに高まったのであった。しかしながら他方、彼が情熱を傾けたアエロポスタル社は内紛もあって、破産のうきめにあう。彼は定期飛行士の職を断念。その後は長距離飛行やテストパイロット、ジャーナリストなども経験するのだが、いずれも危険に満ちたものであった。湾での水没事故、砂漠への不時着、長距離飛行中の失速(瀕死の重傷を負おう)など。ジャーナリストの仕事にしても、きびしい内戦下にあるモスクワ(旧ソ連)や内乱のスペインに出かけているのだ。おそらく療養のかたわらで綴られたのであろう、39年発表の『人間の大地』はベストセラーになると共に「アカデミー小説大賞」を受賞することになる。ただしこれは、自らの飛行士体験を初めとして、同業の仲間たちの肖像や思い出を書いたエッセイ集である。円熟した見事な作品、との評を得ている。第Ⅱ次大戦の勃発(39年)に伴って再び動員されたサン=テグジュぺリは、偵察飛行隊に所属してかなり危険な出撃を行おこなったようだ。

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