あなたも『世界の大文学』の通になる 電子ブック
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142うだ。1948(昭和23)年、さらにもう1冊の作品が発表される。『城砦』と題されたこれは、砂漠の族長父子が語り手となって物語られるもので、著者の思想の深まりを示した大作である、との評がある。だからサン=テグジュペリの最晩年、42~44年の間に書かれていたのだろうか。〈読んでみようかな、というあなたへ〉おとなのための童話、というのは一種の言語矛盾であるけれども、まァ実際的には分かりやすいコトバである。本作にはその表現がピッタリする。事実、1953(昭和28)年に内藤濯あろうの訳で日本に紹介された時は、岩波少年文庫の1冊という形態であった(判型が新書判より少し横広な、いわば全書判スタイル)。しかしほどなく、これは主に若い女性の間に火がついて、今では押しも押されもせぬ古典の1つになったのである。著者の生誕百年(2000年)以降、いくつものテレビ番組で特集が組まれたりもしたのだった。さらにその後、日本では何人もの手になる新訳本が刊行されているので、熱心なファンはそ

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