民話いっちょ食べてみらんの 試し読み
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20それは、この地には金や銀、そして不老長寿を与えるという仁じんたん丹――すなわち硫りゅうかすいぎん化水銀が眠る地と信じられていたからです。窮きゅうち地の神功皇后の船を支えたにな貝は、一いっかくせんきん獲千金を夢見て神功皇后に付き従った人々なのです。そしてもう一つ、この物語は環境的な特徴を捉えています。にな貝には「海にな貝」と「川にな貝」があります。神功皇后は海からにな貝たちを連れてきて、この地に残して行かれました。それを象徴するように、海からこの地まで生息しているにな貝は「海にな貝」です。そしてこの大善寺より先に生息するのは「川にな貝」なのです。かつての人々の営み、ここで暮らす生物の特徴、にな貝の風変わりな渦巻き模様。こうしたいくつかの印象的な特徴が混ざり合い、語り継がれていくことで、この神秘的な民話が誕生したと見ることができるのでしょう。

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