民話いっちょ食べてみらんの 試し読み
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19 玉垂宮とにな貝【解説】久留米市大だい善ぜん寺じ町にある玉垂神社の桜門内では、神功皇后が御船をつないだといわれる大おお楠くすをいまでも見ることができます。民話の中には「船を降りたにな貝が大楠によじ登って休んでいる間に神功皇后が出発してしまった」という一節があり、一見するとのんきで微笑ましいエピソードですが、これを紐解くとまた別の面白い物語が見えてきます。神功皇后はこの地で海船から川船へと乗り換えます。元の船よりも小さくなるので、乗れる船員の数も少なくなり、ここで下船しなければならない者も出てきます。置いていかれたにな貝とは、すなわちここで下船した船員たちのことなのです。しかし、そもそも乗り換えられる船が用意されていることからもわかるように、一部の船員たちの旅がここで終わることは彼らも承知していました。ではなぜ彼らがこの地に残ったのか。

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