民話いっちょ食べてみらんの 試し読み
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11 天熊宇志月読命は牛に、「ここんにき*8に、なんかたべものはなかか」ち、聞かしたげな。すると牛は山ん方ば向いて、口から兎うさぎや猪いのしし、鳥ば吐き出したげな。こんどは海の方ばみて、魚や貝ば吐き出したげな。そればみた月読命は汚いと腹けえて*9、刀で牛ば殺さしゃった10*げな。そのことば天照大神に報ほうこく告せらしゃったげにゃ。「何ちゅう短気なこっば11*したか。お前のような者には任せられん」ち叱って、今度は天あめの熊くま宇う志しば呼んで、「もういっぺん、中つ国さん行ってたべものば探しておくれ」ち、頼ましたげな。天熊宇志が中つ国の海かい岸がんにきてみると、牛が死んでおったげな。よくみると頭には牛と鳥が生まれ、顔にはあわ。*8 このあたりに*9 怒って*10 殺した*11 ことを

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