邪馬台国122号サンプル
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6航空機が行方不明になるという事件があった。この種の事件は、これまでにもたびたび起きている。一九六六年一月十六日に、アメリカのノースカロライナ州のセイモア空軍基地から、四つの水爆を積んだジェット爆撃機がとび立った。ところが、その爆撃機は給油機と接触し、燃料が爆発し、七名の乗務員が命をおとした。乗務員と、水爆と、飛行機の残骸が、空から降りそそいだ。しかし、幸いにして、核爆発は起きなかった。四つの水爆のうち、三つは、事故後、二十四時間以内に発見された。ただ、最後の一つの水爆がみつからなかった。大ざっぱにいえば、このようなばあい、爆弾の沈んでいそうな場所を含む地域についての確率地図をつくる。海面または海底の地図の上に、メッシュ(網の目)をかぶせる。小さい正方形のグリッド(格子)に分ける。そして、その一つ一つの正方形(セル、網の目)についての情報をデータとしていれる。そして、爆弾がそのセルに存在する確率を計算する。このようにして、爆弾が沈んでいそうな場所を示す確率地図をつくる。一九六八年にも、ソ連とアメリカの潜水艦が、乗組員もろとも、行方不明になっている。⑵ 索敵問題 基本的には探索問題と同じである。ただ、逃げまわるターゲットや人間の操縦で動いている目標物の位置をとらえたり、追跡したりする。本誌118号では、基本的に、探索問題を解く方法によって、邪馬台国の場所を求めている。邪馬台国問題は、統計学や確率論の問題としては、ふつうの「探索問題」や「索敵問題」にくらべ、はるかに簡単な問題である。それは、つぎのような理由による。⑴ 「探索問題」では、セル(正方形、網の目)の数は、一万カ所ていどにはなる。セルの数がふえると、確率計算は急速に面倒なものとなる。邪馬台国問題のばあい、「どの県に邪馬台国はあったか」という形で、「県」をセルとして用いれば、対象となるセルの数は、五〇たらずである。卓上計算機ででも、根気よく計算すれば計算できるていどの問題である⑵ 「鉄の鏃」「鏡」など、『魏志倭人伝』に記されている事物などの、各県ごとの出土数などを、データとして入れていく。このばあい、「索敵問題」などと違って、遺跡・遺物などは、動かない。逃げまわらない。統計的方法については、統計学者の松まつばらのぞむ原望氏(東京大学名誉教授、現聖せい学がく院いん大学大学院教授)とともに検討した。松原氏は、この種の統計学の、わが国での第一人者といってもよいと思う。もちろん、私たちがあらたに工夫したところは、すくなくない。たとえば、ふつうの「探索問題」では、それぞれのセルのなかにふくまれている点(情報)の数を数え、全体の点の数に対する比(パーセント)を求め、それを初期確率(事前確率)として計算をすすめる。邪馬台国問題でいえば、各県ごとの、たとえば、鉄の鏃やじりの

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