邪馬台国122号サンプル
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5邪馬台国問題は、簡単な探索問題本誌の前号、121号の「編集後記」で、編集部の白石洋子が、STAP細胞のことにふれている。いわく、「STAP細胞存在の疑惑問題が連日のようにマスコミで報道されているが、記者会見が行なわれた時には、この万能細胞はノーベル賞に値する世紀の大発見であり、医療界の救世細胞だなどと最大限の賛辞を並べ立てて大騒ぎをしていたのは、同じようにマスコミであった。これより少し前には、現代のベートーベンともて囃はやされた男が、実際には全聾ではないどころか、作曲そのものがすべてゴーストライターの手によるものであったということが明るみに出たが、この騒動もまたマスコミが大きく関与していたようだ。一連の件で真っ先に思い出すのは、十四年前に毎日新聞のスクープによって発覚した旧石器捏造事件である。日本考古学界最大のスキャンダルとされ、本誌でも幾度か取り上げたので記憶に新しいのでないだろうか。日本の前期・中期旧石器時代の遺物や遺跡だとされていたものが、全て捏造だったと発覚した事件である。」そしていま、「纒向=邪馬台国の地」などの説に、ここに紹介されているような諸事件を重ねあわせる人々がふえてきているようにみえる。「纒向=邪馬台国説」などは、ほんとうに、「エビデンス(科学的根拠)」が、提出されているのか。STAP細胞の論文事件のさい、その論文に示されている写真などの資料についての疑問点を、もっとも早く指摘したのは、マスコミでも学界でもなかった。インターネットであった。インターネットは、いまや、衆知を集める道具となりつつある。邪馬台国論争は、『魏志倭人伝』の記述に端を発する。『魏志倭人伝』の記述を尊重したばあい、「纒向=邪馬台国説」がなりたつ余地などは、ほんとうに存在するのか。現在、自然科学、社会科学、人文科学を問わず、ある仮説を採択するか否かの決定を、統計学などにもとづく確率計算によって、客観化する手つづきは、常識化している。それは、薬のききめがあるか否かの判断でも、タバコに害があるか否かの問題でも、教育の効果の測定のばあいでも同じである。たとえば、統計学や、作戦計画(オペレーションズ・リサーチ[OR])の分野に、「探索問題」とか「索敵問題」とかいわれる問題がある。これらは、そのまま邪馬台国の探索問題につながりうる。「探索問題」や「索敵問題」というのは、つぎのような問題である。⑴ 探索問題 最近(二〇一四年三月八日)、マレーシアの巻頭言 百二十二号 纒まき向むく=虚構の邪馬台国

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