中村タイル商会創立100周年記念誌_150313
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82出銀なども博多の富家に劣らない額を差出すことができるようになったのも、父親はいうまでもなく、先祖がお守り下さったおかげである。第一に国恩のありがたさを何で報いたらよいだろうか。一国の君主となる方は自分の命を軽んじて戦場にのぞみ、捕われの身となり、かろうじてその難を逃れ、ついには大国を得たものだ。わたくしは賤しい身分ではあるが、辛労を凌ぎ一家を興すという点では君主と変わりはない。家の盛衰は家法を守ることにかかっている。鉄石のように手堅い身代は、たとえ数代かせがなくても衰えることもないだろうが、子の代、孫の代になって身代をなくし、莫大な借金のために家名をなくす家も少なくない。その家を興した人は少しのおごりもなくとも、その子孫となると父祖の大恩を忘れ家業を怠る者が多いからである。わが子孫は、私のこれまでの苦労を思い、物好きをやめて費えなきよう努めなければならない。急に富み栄えることを願い、相場などに手を出せば、かえって家を失うことになる。万事深く思いをめぐらせ、家業を怠らず正路地道をモットーにすれば、子孫の反映は間違いない。御おかみ上から御用銀を仰せつけられた時は、身上相応に御用を務めるようにし、国恩

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