古代人の美意識

書評

世間は空前の古墳ブームなのだそう。
「ほんとに?」と思いつつ、「我々の時代が来たかも?!」と浮かれる今日この頃。前田です。

3月24日にNHK総合で放送された「あなたも絶対行きたくなる!ミステリアス古墳スペシャル」は、古墳の魅力と、出演者の皆様の古墳愛と情熱がぎっしり詰まった、素敵な放送でしたね。

奇しくも先日、番組で最初にオススメされた「西都原古墳群」に行ってきたばかりだったのですが、放送を見て、その素晴らしさをあらためて噛み締めました。
前からずっと行ってみたいと思っていた場所だったので、とにかくウキウキワクワクしながら散策していたのですが、本当に「時間がゆっくり流れる」感覚が味わえた気がします。

見渡す限り、ぽこぽこ古墳だらけな、近代的建物とかがなーんにもない風景は、全国屈指の景観。コロナの影響で博物館が閉館だったのは残念でしたが、菜の花も見頃で、本当に贅沢な時間を味わえました。

さて、そんなわけで今回は、同番組にも出演されていた、松木武彦先生の本を紹介させていただきたいと思います。

松木武彦『美の考古学 古代人は何に魅せられてきたか』(2016年、新潮選書)

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縄等で装飾が施された縄文土器から、よりシンプルで実用的な弥生土器に進化していった。大きな墓=古墳をつくりはじめたことは富と権力の集中を物語っている。日本史の教科書ではそのような趣旨の説明がなされているだろう。

実際、日本の考古学では、モノを徹底的に分析することによって、その機能や役割、そしてそれを用いた行為を推測し、歴史年表を紡いでいく実証主義という手法を伝統としてきた。そこであらわされるのはひたすらに、モノの「理」であり、それはすなわちモノの機能と、歴史年表にのみ焦点をあてることである。

一方で、人類が生み出す物にはおしなべて、人類の美的感覚が投影されている。そしてその営みは、旧石器時代には「左右対称なモノをつくりたい」という形で表されている。機能的に言えば、左右対称である必要のない石斧や石槍も、より「よい形」、翻っていえば「美しい形」を求めて、進化しているのだ。本書で著者が語るのは、モノから古代人たちの心理的変化を読み解く、「美の考古学」という視点だ。

我々が縄文土器を見たときにも、心をざわつかせる、得も言われぬ感覚があるだろう。それは古代人が感じた心の風景とも言える。なぜ前方後円墳はあのような形になったのか。そして、古墳の変遷に見る古墳の「トレンド」とは、どのような心理を表しているのか。

モノに込められた美を読み解くことは、実証主義では語れない、考古学のもう一つの在り方だといえる。こうしてモノを通して、古代人と対話することもできるのだと、本書は教えてくれるのだ。

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(おまけ)最近、「古墳でこーふん健康体操」なるものが完成したようです。みんなで踊ってみよう!

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