本の力、愛する力

書評

こんにちは。前田です。
福岡の中小企業応援マガジン『Business Navigator(ビズナビ)』(㈱ビジネス・コミュニケーション 発行)に毎月1本、かれこれ7年ぐらい、書評のようなものを連載させていただいているのですが、せっかくなので、こちらの梓blogでもご紹介させていただこうと思います。

記念すべき転載第1回はこちら。


久住邦晴 著『奇跡の本屋をつくりたい くすみ書房のオヤジが残したもの』(2018年、ミシマ社)

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2017年8月末。多くの人に愛された、とある書店の名物店主が他界した。

札幌・くすみ書房の店主、久住邦晴氏が生前残した遺稿に、盟友の中島岳志氏が解説を加えた本書には、出版業界を取り巻く状況の厳しさ、逆境に立ち向かう発想力と経営術、そしてなにより本を愛する心がつまっている。

2000年に全国2万2千店以上あった書店は、現在1万3千店を切った。それだけ出版業界を取り巻く状況は変わり、この数字は書店が生き残っていくことのむずかしさを如実に物語っている。

2000年頃、くすみ書房も慢性的な赤字に悩まされ、倒産寸前の状況に陥っていた。それでも、息子の早すぎる死をきっかけに経営を立て直す決心をした著者は、数々の「非常識」「業界初」な取り組みを行い、活路を見出していった。その先鋒を担ったのが、「売れない文庫フェア」と題した、売上下位の文庫本だけを集めた文庫本フェア。このフェアは用意した1500冊の文庫本がわずか1ヶ月足らずで完売するという、異例の販売記録を達成した。他にも「中高生はこれを読め!」「ソクラテスのカフェ」など数々の企画を成功させていった著者だが、その原動力になったのは「本の力を信じる心」、そして「本を愛する心」ではなかったか。著者が、「本には人生を変える力がある」という通り、私も本によって人生を救われた者のひとりである。

業界に身を置く人間としてはもちろん、イチ読書ファンとしても、本を愛する人がひとりでも増えるよう、これからも情熱を注いでいきたい。

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転載記事なので、文体が違うのはご愛敬、ということでご容赦くださいませ。

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